升水 宏樹 / 生活の道具 なべや

 特別に何か欲しいものがなくても、なんとなくキッチン道具や生活雑貨のお店があるとふらっと入りたくなりますよね。
平塚で料理道具のことなら、まず思い浮かべるのが湘南スターモール商店街にある「生活の道具 なべや」ではないでしょうか。
それもそのはず、なんと明治6年に創業、昨年には150周年を迎えたという老舗店です。

「え!?自分が何代目かなんて覚えてないよ〜」ととぼけた調子で答えてくれたのが現在の店主・升水宏樹さんです。立ち上げの頃から「まち活」に関わる升水さんにお話を聞きました。

取材協力:ママぎゅっと

 「まちゼミ」で新しいまちとの関わり方を発見

 平塚のまちづくりには、関わってきたというなべやの代々の店主たち。

もちろん升水さんも、「自分たちの大切なまち、協力するのは当たり前のこと。
ただ、直接商売につながるものではないし、意味があるのかな」とどこか引いた視点で市や商店街のイベントに参加してきたといいます。そんな思いを一変させたのが「まちゼミ」への参加でした。


 お店の人が講師となり、お店で開くというコンセプトに合わせて「土鍋で炊いたご飯でおにぎらずを作ろう」など専門知識を活かした講座を企画。
半信半疑で参加したまちゼミでしたが、「今までのイベントはどこかに会場を設けて、そこにわっと人が集まって、終わってしまうものが多かった。
参加者がお店に来ることが新鮮で」と手応え。
まちゼミを企画する他の店主たちと知り合う中で、「今度はまち活をやるよ」との声に誘われて、「何かできそうな予感」から自身も参加することになったそうです。

 お店から飛び出して、広がる世界

 まち活では「青空ファミリースペース」を担当。

青空ファミリースペースは、大門市などのイベント実施されるとき、商店街を歩行者天国にして、人工芝の上でのびのび過ごせる憩いの場所づくりです。
体操をしたり、遊びのコーナーを作ったり、こどもも大人も楽しめる工夫がいっぱい。

「ぼくらって普段お店の中でお客さんをずっと待っていることが多いじゃない?一歩外へ飛び出すだけで、こんなに面白くなるんだ」と目を丸くする升水さん。

その延長線として、まち活の代表でもある能勢さんが運営する「ギャラリー能勢」や「なべや」の店舗前にイスとテーブルを常設。
すると「最近、女の子2人組がランチするようになったんだよ」と驚いた様子。
さらに続けて「邪魔しては悪いから、声はかけられないけど、なんだかうれしくてさ。
ぼくたちが提案した憩いの居場所というコンセプトが伝わったのかも」としみじみ。

「商店街にベンチはたくさんあるけど、汚れていて使いにくい。きっときれいなベンチにするだけでも、活性化していくのかもね」

実は、一度は辞めようと決意。でも…。

 スタートダッシュの時期が過ぎ、ふと立ち止まってみると、「自分たちのやる側の満足であって、商店街としてみたときに、このまちに大きな影響(効果)を残せたのかなと疑問に思ってしまって」と真剣な表情。

どちらかというと積極的なタイプではなかったという升水さん、それではやりたいことに熱意を持って取り組む他のまち活メンバーに対し失礼だからと、辞める決心をしてメンバーに相談をした過去も。
ところが腹を割って思いの丈をぶつけると、丸ごと受けとめてくれたメンバーたち。

「商売への取り組み方などを話せることがやっぱり面白くて、刺激になる。うまく丸め込められちゃった」と笑顔。


 今でも「あくまで自分はサポーターだからね」と宣言する升水さんに、メンバーも「はいはい、いつものね」と慣れた様子で返す様子に、遠慮のない信頼関係を感じます。
何より、取材時もまち活オリジナルTシャツをしっかり着込んできてくれる升水さんには、隠しきれない「まち活愛」があふれちゃってました。

なくても困らないけど、あったらいい存在に

「仕事を除いても、インテリアや建築が好き」。

近隣のお店をはじめ、新しい施設などができたと聞くと要チェック!
コロナ禍では、家族で小田原や箱根などに出かけることが多かったそうです。
そこでもつい気になってしまうのが、商店街やまちのあり方。
他の地域のにぎわいと平塚を比べつつ、「ソフト(イベント)だけでなく、ハード面(建築など)を整えていくことも必要では」と俯瞰する“鳥の目“は今も健在。

また「キッチンの道具もインテリアの一つ」と、魅力的な商品を見つけると、メーカーに直談判して取引を開始することもざらだといいます。
だから、店内にあるどんな商品をたずねても情熱的な説明が聞けるんですね。

「おばあちゃんの代からの定番は、今も使える定番だから」とにっこり。
「かわいいだけでなく、おすすめポイントがしっかり書いてあって、参考になる」とママたちの間でも話題のインスタグラムも必見です。

自身を野菜に例えると「ブロッコリー」。「なくてもいいけど、添えたら彩がよくなる。そんな存在感で」

升水宏樹

1969年6月29日 B型 蟹座

生活の道具 なべや
ホームページ  https://e-nabeya.com
インスタグラム https://www.instagram.com/hiratsuka.nabeya